誰もいなくなった船着場に、天を見上げた姿のまま、玲王が倒れていた。
いま不屈の男は絶望に忘我して、立ち上がることもできないでいる。
力を使い果たし、仲間を失った彼にはもはや、抗う力はない。
在るのは、ただ思い出のみ。
そばに居てくれただけでどれだけ救われていたのだろう。
無くして初めてその大切さに気づかされた。
「どうして・・・あいつが・・・・・」
もはや届くはずのない言葉を、玲王は溢れ出る涙を止めようもなく、ただ詫び続けていた。
どれほどの時間が経ったであろうか。
もはや時間の感覚がなくなった世界で、それでも俺は・・・・・
もう、何もかも遅いけれど・・・。
すべてが手遅れになった今だからこそ、無限にある時間の中で、・・・考えよう。
そして玲王は、溢れ出てくる記憶の中をゆっくりと沈んでいくように、
共に駆け、紡いでいった物語の狭間を抜けて、・・・どこまでも落ちていく。
それはまるで、意識を持ったまま、夢現の境界に至ろうとするような不思議な体験。
それまでの数々の思い出が、細かい泡となり、漆黒の闇に星のように散らばる。
その海をどこまでも、ゆっくりと沈んでいく。
魔道書による悪魔の事件・・・
強力な抗魔力・・・
竜ヶ峰家の悲願・・・
10年前の儀式・・・
七曜の力・・・
そして、・・・・・俺は、・・・・・理解する。
絶望から醒め、少しずつ、痛覚が戻ってくる。
意識がはっきりしてくるとともに、力いっぱい握り締めているものに気がつき
あらん限りの声で泣き、玲王はそのリボンを握り締め、
その拳を額に当てて、謝罪する。
・・・なぜもっと早く、真実にたどり着けなかったのかと。
そしてそれを胸に当て、せめてこんな形であっても、二度と真実を失わないことを誓う。
その時、手の中のリボンが、黄金に輝きだす。
その眩い黄金の光は、玲王の身体を黄金の光で包み込んでいく。
生きる意志が、
闘う意思が、
甦る・・・
ボロボロに傷つきながらも、ゆっくりと自らの足で再び、・・・立ち上がり高らかに宣言する。
「神、悪魔、天使すべての者に告げる」
「神話は俺たちが紡ぐ」
参考動画→http://www.youtube.com/watch?v=za7c5pTnauQ
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