神崎家に合宿にきて2日目、彼らはとてつもなく疲弊していた。
無理も無い。
来るかもわからない襲撃者に備えて気を張っているという状態は、
彼らの体力と精神力をゆっくりと、だが確実に削っていった。
故に、無事に夜を切り抜けたという安心感と、
昼間の明るいうちに襲撃はないだろうという油断が弛緩した空気を生むのもしかたのないことだった。
そんな中、神崎が街に買い物に行くことを提案してきた。
特に疲労の色が濃い伊藤をリフレッシュしてやりたいのだろう。
準備のため神崎と伊藤が別の部屋へ移動していく。
そして、丁度2人がいなくなったところで理沙からとんでもない告知を受ける。
理沙の正体、任務について等々。
にわかには信じがたい話である。
が、彼女が持つ兵器の数々が雄弁に物語っていた。
彼女が狩る者だということを。
「キャーーー」
突然、悲鳴がこだまする。
驚くと同時に身体が反射的に2人の元へ向かう。
玲王は、自分の不甲斐なさに歯噛みした。
一般の高校生の強さとしては申し分ないものを持っている彼だが、
所詮は素人。魔術師との戦いに必要とされる知識も力も不足していることを痛感させられる。
駆けつけた部屋は、異様の一言に尽きた。
まるで床が底なし沼にでもなってしまったかのように神崎と伊藤がゆっくりと沈んでいた。
理沙と協力して、まず相手のターゲットである伊藤を竹刀を使って廊下から助け出す。
しかし、伊藤を助け出すうちに神崎の身体はみるみる沈んでいき、
伊藤を助け出した頃には、神崎の身体はほぼ床に沈んでしまった後であった。
神崎はもう引っ張りあげられる状態ではない。
玲王の冷静な部分では、そう冷酷に見立てを済ましていた。
しかし身体が、否、感情がそれを拒否する。
気がつけば床へ飛び込んでいた。
「・・・どういうことだ?」
シンと静まり返った体育館
まったく誰の気配もしない中で玲王、理沙、葵はしばし固まっていた。
そして、はたと伊藤が一人きりになっていることに気づいた者から
弾かれるように神崎家へ駆け出していった。
--そうして走り回ること数十分あまり、玲王は校長室で悪魔に囲まれていた。
to be continued
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